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DXを成功に導く3ステップ 実践企業事例/株式会社山梨中央銀行様

ペーパーレスと電子決裁で時間とコストを削減し
企業風土を改革しながら全社レベルでDXを推進

山梨県の地銀であり、東京都西部にも拠点を展開している山梨中央銀行様では、成長のための変革ドライバーの一つにDXを位置付け、攻めのDX、守りのDX、支えるDXを展開しています。そこではディサークルが提供する「POWER EGG」が重要な役割を果たし、DXによって企業風土も変わりつつあります。なぜ同行は一丸となってDXに取り組むことができていて、どんな成果に結びついているのでしょうか。同行で中心となってDXの推進に取り組む皆さんに、関戸紀仁が話を聞きました。

パーパスを策定したことで
ぶれない取り組みが可能に

山梨中央銀行様がDXに取り組む契機となったのはフィンテックでした。「デジタルを駆使して便利なサービスを提供するフィンテックが登場し、アナログのままでは淘汰されてしまうと危機感を持ちました」と古屋豪氏は当時を振り返ります。

そこで同行では2017年に経営企画部、営業統括部、システム統括部のメンバーによるデジタル化推進チームを立ち上げます。「まずは業務効率化を徹底しました。全ての業務を棚卸しし、業務の削減とデジタル化、ペーパーレス化を図りました」(古屋氏)

外向けのサービスを提供するには内部から変えていかなければならないと、社内の業務革新に取り組んだのです。

次に目指したのは、BPRの発展形である、ビジネス・プロセス・イノベーション(BPI)でした。本部にBPIサポートチームを発足し、2019年10月にグループウェアとしてPOWER EGGを導入、生産性向上のためにRPAも活用するようにしました。

2020年10月には頭取を委員長とするDX推進委員会を設置し、経営企画担当常務と各部の部長も参加して、素早く意思決定する体制を整えました。「価値創造プロセスの中で当行として取り組むべき重要課題が明確になり、攻め、守り、支えの3つのDX戦略に沿って、全社的にDXに対する意思統一が図られるようになっていきました」(古屋氏)

この中で重要な鍵となったのが、2022年4月のパーパスの策定です。「山梨から豊かな未来をきりひらく」というパーパスによって、なぜDXに取り組むのかが明確になり、どのように成果に落とし込んでいくか整理することができました。

パーパス策定に当たった小松裕仁氏は「中期経営計画をまとめるプロジェクトチームは6チームあり、総勢50人ほどでした。その全員であるべき姿から課題を洗い出し、その中で出たメンバーからの意見等を基に、パーパスのベースとなる考え方を整理しました」と話します。「地方銀行として差別化を図るために、"山梨"をキーワードとして、山梨"から"ビジネスを広げ、外に発信していきたいという経営トップの強い想いがこのパーパスには込められています」(小松氏)

図1 山梨中央銀行における「DXの3ステップと土台作り」
図1 山梨中央銀行における「DXの3ステップと土台作り」

パーパスによって行員の志を一つにするために、一人ひとりが腹落ちするよう、経営者の口からパーパスを繰り返し発信し続け、およそ2年で部門、部署、個人にまでパーパスが浸透していきました。「DXに対する意思統一を図ることができたのは、パーパスがしっかり根付いたからです。今ではパーパスは行員全員にとって動くことのない北極星の役割を果たしています」(古屋氏)

一方で同行では矢継ぎ早にDXを推進する施策を展開していきました。2021年には全職員に業務用スマホを配布。2022年にはDX認定制度を取得し、店舗にはセミセルフ端末の導入を開始。2023年に勘定系システムをクラウド上に移行すると共に、DX人財育成制度を整備していきました。

POWER EGGで実現した
ペーパーレス化と電子決裁

こういった同行のDXへの取り組みを支えてきたのがPOWER EGGです。大柴岳氏はPOWER EGGを選定した理由について「電子決裁の仕組みがあってペーパーレス化が実現できる点と、コードが書けなくてもアプリが作れる点を評価しました。以前使っていたグループウェアのような属人化が避けられるのもポイントです」と話します。

当初はアプリの品質にばらつきが出ないように、全てのWebDBを本部BPIサポートチームの業務見直しチームが作成しました。そして、2年半かけてPOWER EGGが定着してきたことを確認できたところで各部に作成の権限を委譲するという段階を踏みました。業務見直しチームが担当した2年半の間に、893あった帳票のうち409がPOWEREGGのWebDBで電子化され、190が廃止されました。現在は本部各部から申請された新規のWebDBを、大柴氏がユーザー目線で検証することで、電子帳票の品質を維持しています。

POWER EGGの効果として上げられるのが、ペーパーレス化と決裁時間の削減です。書類はPOWER EGG上でリアルタイムにやりとりされるので、2022年3月までに銀行全体で使用する紙の約50%が削減され、決裁にかかる時間は半分以下に短縮されました。

「毎月プリンターで出力した枚数をカウントして、ペーパーレスを意識付けしました。また、行内の主要会議をペーパーレス化し、上層部から意識変革に積極的に関与いただけたことや、タブレット端末が導入されて場所を問わずにPOWER EGGが使えるようになったことも大きかったと思います」(大柴氏)

決裁をする管理職にとってもPOWER EGGはメリットをもたらしました。自分に回ってくる決裁書類を事前に見ることができるので、隙間時間を活用して検証しておき、申請がきたらすぐに承認することが可能です。こうした業務DXによって生み出された余剰時間でさらなるDXを加速させることができるのです。

デジタルを活用することで
営業店事務ゼロを目指す

同行ではデジタルを活用する風土の醸成と併せて、既存の事業のDX化、事業DXを推進しています。

その一つがデータドリブンへの取り組みです。DX人財育成制度で教育を受けた人たちにより、データドリブンのためのワークグループが作られています。「社外のデータ分析コンペに参加する人や課題解決のためにデータを活用する人も出てきました」(古屋氏)

具体的には、各店舗の来店客数の予測や、取引ごとの事務量の計測・可視化を通して、効率的な人員配置につなげるなどの取り組みが進められています。

また、店舗での事務作業を徹底して効率化しようという「営業店事務ゼロ」という取り組みも進められています。ポイントとなるのは受付業務の合理化と効率化、そして後方業務の本部集中化であり、受付業務の合理化と効率化のために開発されたのが「Smile One」と「Quick One」です。

事務ゼロを推進する手塚一氏は「口座開設や様々な変更手続きなど受付時間を要する業務について、専用のタブレット画面に沿って手続きを進めることで、受付事務の効率化およびお客様の利便性向上を実現したシステムがSmileOneです。また、電子署名や捺印をデータとして取り込み、各種帳票に自動印字することもできます」と話します。Smile Oneは導入から6年が経過し、営業店事務にはなくてはならないシステムとなっています。

一方、Quick Oneは専用タブレット端末に取引内容を入力し、税金納付での現金投入を専用の機械にお客様が自ら行うセミセルフ端末です。「基本的に操作は行員が行っていますが、本システム導入後、行員が現金を扱うことがなくなりましたし、伝票レスでの取引が可能となりました」(手塚氏)

しかし、全ての後方業務がなくなるわけではありません。そこで店舗から本部の事務集中部門に各種帳票のイメージデータを電子的に送達して、集中部門で事務処理を行う体制も整えました。

また、お客様のさらなる利便性向上に向けて、オンラインで手続きが完結できる山梨中銀アプリも構築しています。営業店と同等のサービスをデジタルで提供できるよう目指しています。(図2)

図2 事業DX=既存事業のDX化
図2 事業DX=既存事業のDX化

心理的安全性を高めて
DXをドライブさせていく

同行では外部向けにデジタルを活用した新しいビジネスモデルを模索する構造DXにも取り組んでいます。開発したシステムを他行に販売することやコンサルティングのメニューにPOWER EGG導入支援を加えるなど、これまでにない新たな価値提案を強化しつつあります。

同行のビジネスのスコープには、地域にいかに貢献するかも含まれます。地域企業のDX推進を目的とした山梨DX推進支援コミュニティへの参画や、甲府駅近くに地域DX推進の活動拠点を設置し、他の事業者と共にデータ・デジタルを活用した地域課題解決につながる新規事業創出に向けて取り組むなど、対外的な関係構築にも積極的に取り組んでいます。

POWER EGGはこうした事業DXや構造DXでも大きな役割を果たしています。それが電子会議室の機能を活用した「T-LINE」です。(図3)

図3 業務改善や各種意見提案を直接行う場「T-LINE」
図3 業務改善や各種意見提案を直接行う場「T-LINE」

頭取に対して改善や意見を提案できる場であり、行内の風通しをよくするための企業風土改革の一環として設けられました。運用から約3年半で投稿は340件に及び、うち200件以上については対応が完了しています。

「最初は匿名投稿が多かったのですが、実名が増えてきたので、2024年2月から運用を開始したVer2.0では実名のみにしました。頭取がプロジェクトの立ち上げを指示すると、メンバーを募るWebDBのリンクが公開される機能もあります。メンバーには要件を設けず、原則所属や年次問わず誰でも参加できるようにしています」(大柴氏)

POWER EGGによって情報がオープンになり、心理的安全性が高まったからこそできる施策だと言えます。

「こうした取り組みから、様々な人の意見を聞くことで、既存の延長ではない新たな発見・気付きをもたらすことができ、DXへとつながります。デジタル活用は過渡期ですが、POWER EGGで文化が変わることで、DXが加速していくと感じています」と古屋氏はさらなるDX推進への期待を語りました。

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このような方におすすめです。
・DXのやり方を知りたい方
・DX推進をしている方
・ペーパーレスのやり方を知りたい方