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DXを成功に導く3ステップ 実践企業事例/株式会社テクノ高槻様

不都合なことも含めてデータを共有することで
ミスが減って効率化が進み、企業体質が変化した

伝統的な企業にとってDXを成功させることは簡単なことではありません。70年以上の歴史を持ち、世界中にエアーポンプを提供してきたテクノ高槻様では、POWER EGGを導入してDXを進めることで、メインの事業の収益性を高めると同時に、新規事業分野への進出も実現しています。どんな取り組みが企業体質の強化につながり、どんなメリットをもたらしたのでしょうか。同社の人事総務部門とシステム部門を管轄し、DXの推進役である管理本部副統轄の東祥治さんに、関戸紀仁が話を聞きました。

社内の風通しを良くするには
データで語るのが一番の近道

テクノ高槻はどんな特徴がある企業なのでしょうか。

事業の主体はエアーポンプの製造と販売です。1967年にリニアモーターの原理を生かして設計されました。寿命が長く、消費電力が少なく、メンテナンスが不要で、米国をはじめ、世界80カ国で2000万台近くが販売されています。

当社自身は1947年にモーターを修理する企業としてスタートしています。その後松下電器様(現・パナソニック様)の下請けとしてモーターを製造していましたが、28歳で就任した2代目社長がイノベーションメーカーとして自立したいと考え、モーターの技術を生かしてエアーポンプを発明したのです。

エアーポンプの事業が順調に伸びていったこともあって、社風としては良く言えばのんびりしていて素直で誠実、逆に言えば受身的でイノベーティブな雰囲気はありませんでした。

株式会社テクノ高槻 管理本部 副統轄 東祥治氏
株式会社テクノ高槻 管理本部 副統轄 東 祥治氏

そんな御社がどういう背景でPOWER EGGを導入することになったのでしょうか。

もともとは別のグループウェアを導入していたのですが、作り込み部分が増えて複雑になり、ライセンスコストも高かったため、見直そうという機運が高まっていました。当時の社長からは「グループウェアを新たに導入するなら、社風を良くすることにつながるものに」という要請がありました。

当時は社内がちょっとギスギスしているようなところがありました。社長は社内の風通しを良くして、みんなが協力し合えるようにしたいと考えていたようです。

POWER EGGを選定した決め手はどこにありましたか。

社内の風通しを良くするためには、データでものを語るようにするべきだと考えていました。ところが多くのグループウェアはSNS的に作られていて、テキストベースでの情報共有に終始していました。これでは仕事では使えないと考えていた時に私の部下が見つけてきたのが、データをベースに情報を共有できるPOWER EGGでした。

2012年に管理部門でテスト導入してみたところ、標準機能だけでもデータを収集できて、誰でもデータを活用できることが確認できました。それまでデータベースについては簡易の開発ツールを使っていましたが、ある程度のスキルが必要で誰もが使えるものではありませんでした。

当時の社長もデータを集めて活用できることの意義は理解してくれましたが、楽しい雰囲気でデータを集めたいと、誰もが使えるような見栄えの良いインターフェイスにこだわっていました。その点ではまだ不十分だったので、2年ほどかけて「コーポレートナビ」として画面を作り込み、フレンドリーな雰囲気にして2014年に正式導入にこぎ着けました。

ディサークル株式会社 業務改革ラボ 所長 慶應義塾大学大学院 経営管理研究科修了 中小企業診断士 関戸紀仁
ディサークル株式会社 業務改革ラボ 所長
慶應義塾大学大学院 経営管理研究科修了
中小企業診断士 関戸紀仁

システムの提供と同時に進めた
人材教育がDXを成功に導いた

導入後は順調に活用できたのでしょうか。

変化には抵抗が付きものです。データベースとして営業カルテ、仕入先カルテ、人材カルテを用意したのですが、最初はやらされ感があって、なかなかデータを入れてくれませんでした。

データを入れることは直感的には手間が増えるだけで、自分にとっての利益が感じられません。自発的に入れてくれるようになることが重要でした。そのためにデータを入力しやすくしたり、データを入れないと次のステップに行けないなどの工夫を凝らしました。

何よりも重要だったのは、意識改革です。同じタイミングで実施していた人間性教育が役に立ちました。人や社会に貢献しようという「利他」の人材教育を取り入れ、記録を残すことやデータでものを言うことを徹底しました。

データは一部の人のものではありません。誰もが使えるようにすることで、価値を生み出すことができます。データを入れることで人の役に立ち、ひいては自分のメリットになることを理解してもらうことが重要でした。データの民主化こそが業務を変えるのです。

その点でPOWER EGGは期待通りのツールでした。エクセルシートのデータをそのままデータベースに取り込めるので、これまでの情報資産を生かすことができますし、閾値を超えたものにはアラートが出せるので、問題を未然に防ぐことができます。データがどう役に立つかを理解してもらいやすいツールでした。

POWER EGGを使うことで社内の変化はありましたか。

他の人の大変さがデータでわかったことが大きかったですね。大変なのが自分だけではないと分かって、協力し合う雰囲気が生まれて、実際の行動に結び付きました。自分の業務が他の人の業務に影響することがわかると適度の緊張感がもたらされて、その結果失敗自体が減り、クレームを受けることや、納期遅れが激減しました。

次の段階では、工程全体の効率化を考えるようになりました。次の工程に迷惑がかからないように信頼度の高いデータをインプットすることで、仕事がスムーズに流れるようになり、全体の生産性が向上しました。

誰も人に迷惑をかけたいと思ってはいませんから、ワークフローが見えることで、全体が上手く回るようになりました。数年かけて良いインプットが良いアウトプットにつながることを体感してもらった結果です。

システム構築の流れとして、導入(ユーザーフレンドリーな前者ポータル画面を構築)、ペーパーレス・脱EXCEL(データを蓄積し、可視化することで、情報の非対称性を解消)、DB・WF・基幹連携(部門をつなぐフローにより、作業の効率化と仕事の全体像の見える化)がある。人材育成の流れとして、他者を利する(利他の考えで、記録を残す、データでものを言うことを徹底)、良INPUT・良OUTPUT(良いデータを入れることで人の役に立ち、ひいては自分のメリットになることを体感)、全体最適(スピーディーな変化に対応するために、全体最適の考え方を浸透)がある。システム構築と人材育成を行き来しながらDXを推進している図。
(図1)システム構築と人材育成を相互に作用させDXを推進

まさに「DXを成功に導く3ステップ」の最初の「業務DX」のステップに進んだことになりますね。

トラブルのリカバリーの必要がなくなり、対策会議も開かれないようになったことで、時間的にも気持ち的にも余裕が生まれました。誰もが他の人の話に耳を傾けるようになり、会話からイノベーションへとつながるヒントが得られるようになりました。

例えば、以前紙で通知されていたCAD上での図面の変更情報をPOWER EGGで通知するようにしたことで、リアルタイムに現場の人に伝わり、不都合があればすぐに反応できるようになったことで、開発スピードが上がり、品質レベルも向上しました。

それだけではありません。情報共有のやり方が変わったことで、社員の意識も変わり、皆が当事者意識を持つようになりました。全社導入から3年ほど経った頃から、誰もが意見を言える土壌が生まれ、せきを切ったように現場からひっきりなしに提案が出てくるようになったのです。

中には自分の周りだけを良くするような提案もあり、部分最適ではなく、全体最適を考えるように指導していますが、これが腑に落ちると雰囲気がガラッと変わります。人のためになっていると実感することでプラスのサイクルが勝手に回り始めたのです。

DXを成功に導くステップとして、第1ステップでは業務のIT化(効果:余剰時間の創出/コスト削減/成功体験、ゴール:顧客価値向上に利用)、第2ステップでは現状のビジネスモデルのデジタル化(効果:場所や時間的成約の排除、ゴール:現状のビジネスをデジタル上で実現し新しい顧客価値を提供)、第3ステップではデジタルの世界で新ビジネスモデルの模索(効果:デジタルでしか提供できない新しい独自の顧客価値の提供、ゴール:新業態への転換)がある。第1ステップは社内、第2第3ステップは顧客向け。
(図2)DXを成功に導く3ステップ

システムで情報を共有することで
お互いが協力し合うようになった

データを共有することでどんな変化が起きましたか。

一義的には生産性が向上しました。以前は部署をまたいでそのままデータを渡すようなことはありませんでした。そのために次の部署で同じような作業をしていました。部署をまたぐデータベースやワークフローを作ることで、こうした無駄な作業は解消できました。

それ以上に大きな変化は心理的安全性が高まったことです。都合の悪いデータがそのまま共有されることは、アラートを出すことでもあります。納期がずれ込みそうだという情報は、次の工程での工夫を促します。理由も共有されていますから、悪気がないことも理解できています。

システムがこうした情報を発信することは、公平性を担保することにもなります。皆が当事者目線で見ることができるようになり、情報が即時に共有されることで、助けてもらえるという期待も高まり、心理的安全性が高まります。心理的安全性が高まることで、新しいことにも積極的に取り組めるようになります。

「業務DX」の次のステップである「事業DX」や「構造DX」につながる動きもあるのでしょうか。

失敗が減ってコンスタントに利益が確保できるようになったことで、目先のことだけでなく、長期的な視点から考えるようになって、「もっと世の中の役に立つにはどうすれば良いのだろうか」という会話をするようになってきました。そこから生まれてきたのが医療分野やエネルギー分野での新規事業です。

DXに取り組んだ結果、社内はデジタル化に自然に目が行くようになりました。当社が強みとするエアーの技術を医療にも生かそうと、いくつかの製品を開発していますが、そこにデジタル的な要素を入れて、データの共有やデータ活用につなげていくという視点も持てるようになりました。

これまで診断から外科治療、保存治療、セルフケアという流れにはエビデンスがなく、一貫した治療が行いにくい状況でしたが、そこにデジタル的な要素を入れることで、データを共有して、エビデンスベースの治療が行えるようになります。製品を通してデータを集めることで、個人に寄り添った予防や治療ができるようになると考えています。

こうした発想が出てくるようになったことも、DXに取り組んできた成果だと考えています。

(図3)テクノ高槻の取り組み~医療関連の製品開発に、データ活用の視点を組み入れ、エビデンスベースの治療を支援~
(図3)テクノ高槻の取り組み~医療関連の製品開発に、データ活用の視点を組み入れ、エビデンスベースの治療を支援~

ご自分の経験を通してどんな組織がDXに向くとお考えでしょうか。

心理的安全性が高く、ポジティブとネガティブの両方とも同じだけ言い合える組織です。誰しも失敗や困っていることは言いにくいものですが、それが言えるようになっていることがDXの成功につながります。人に頼みにくいことはPOWER EGGが伝えてくれて、そこから協力が生まれ、解決策が生まれ、感謝の気持ちが生まれてきます。

ただ、最初から心理的安全性が高い状況が不可欠だと言うわけではありません。それを意図して段階的にDXを進めていけば良いのです。他社の例を見ていても、最初から意図的に取り組んできた企業が、早くから効果が出ていると感じています。トップのコミットメントだけでなく、入り口として文化を醸成していくことが必要なのです。

プラスの循環を生み出すにはステップを踏むことが大切です。特に、最終目標と途中のマイルストーンを決めておくことは重要です。最初のマイルストーンまでは緻密なストーリーで進めて、最後の方のマイルストーンは楽観的でバラ色なストーリーにしておくことで、大きな成果が得られるのではないでしょうか。

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