DXを成功に導く3ステップ 実践企業事例/沖縄振興開発金融公庫様
沖縄公庫が挑むDX
CXとEXの相乗効果で成果を生み出す

沖縄県のみを対象とする唯一の総合政策金融機関である沖縄振興開発金融公庫(以下、沖縄公庫)では、コロナ禍による取引増加などの影響を受けて、2022年度から本格的なDXを推進してきました。従来の紙とハンコの業務スタイルからデジタルを駆使した業務DXにシフトすると共に、顧客との接点のデジタル化、さらにはデータ活用の高度化を視野に入れた取り組みが進められています。その第一弾を担ったのがディサークルの「POWER EGG」です。沖縄公庫のDXがどのような成果を生み出しつつあるのかを関係者に聞きました。
コロナ禍で取引先が増え
デジタル活用に舵を切る
「DXという言葉はコロナ禍前から認識していましたし、業務改善にも取り組んできました。しかし、コロナ禍で取引先が急増、その後の支援等を見据えた業務体制の検討をきっかけに、業務改革の一環としてデジタル化を本格的に進める機運が高まりました」とDX推進をリードしてきた業務統括部部長の慶田康成氏は話します。
1972年の沖縄本土復帰に伴って設立された沖縄公庫は、沖縄だけを対象とする唯一の総合政策金融機関として、本土での日本政策金融公庫、住宅金融支援機構、福祉医療機構に相当する業務を一元的に取り扱い、経済振興のための融資や出資など、国や県の沖縄振興策と一体となって民間資本への資金供給に取り組んでいます。
そうした位置付けにある沖縄公庫では、観光を基幹産業とする沖縄の企業がコロナ禍で大きな打撃を受けた際、迅速な資金繰り支援に取り組み、取引先が急増。業務統括部業務企画課調査役の久手堅丈人氏は「2020年に約1万5000社だった取引先が2023年には約2万3000社に増えました」と変化を語ります。
金融機関としては取引先をフォローアップしなければなりませんが、沖縄公庫の職員数は約220人でうち営業担当が約100人と限られています。「しかも沖縄県は東西約1000km、南北約400kmと広大で、離島の取引先も多く、増えた約8000社のフォローアップは相当な業務負荷になると予見しました」(慶田氏)
そこで改めて注目したのがデジタルによる変革、DXの推進でした。業務をデジタル化し、遠方の顧客とリモートで接することができれば、大幅に効率化できます。「ビッグデータが注目される中、今のシステムインフラでデータ活用ができるのだろうかという不安がありました」と慶田氏は当時を振り返ります。
そこで沖縄公庫では2021年に「沖縄公庫IT戦略」を策定、まずは従来の紙とハンコというスタイルから脱却しデジタル化を進め、その上でデジタル技術の活用による顧客利便性の向上や業務の変革と効率化に踏み出しました。
最初に実施したのは、若手職員の意見を聞くことでした。慶田氏は「業務についての傾聴と対話を通して沖縄公庫の課題を洗い出していきました。それまでボトムアップの機会が少なかったこともあって多くの意見が集まりました。それが今のDXのネタ帳になっています」」と語ります。
ボトムアップの活動はさらに続きます。現在は情報システム統括室調査役の任に就いている國吉真聡氏は「メールで業務改善案を出してもらう『ひらめき提案』を実施しました。数多くの提案が上がってくる中、若手のアイデアを優先して実施することで成功体験を積めるよう意識しました」と話します。
日本の組織風土に合致した
POWER EGGを採用
沖縄公庫では2023年にIT戦略の後継戦略となる「沖縄公庫DX戦略」を策定し、政策金融機能を持続的に発揮するために、業務改革とDXに中長期的な視点から取り組むことを宣言し、「顧客接点の強化」「業務プロセスの変革・デジタル化」「データ活用の高度化」「組織変革・人材育成」の4つの柱を掲げました。
「DX戦略を策定した目的は組織全体での価値観の共有です。CX(顧客体験)とEX(従業員体験)の相乗効果を生み出してデジタル化による成果を挙げ、金融の基本となるお取引先との対話の時間を増やし、お取引先にとって頼りとなる存在であり続けることを目指しました」と慶田氏は話します。
このDX戦略のエンジンに位置付けられているのが、ディサークルのDXソリューションPOWER EGGです。出会いは2022年に大阪で開催された金融機関向けDXイベント「FIT」でした。「学びと刺激を求めてFITを視察し、金融機関での導入実績があるPOWER EGGに興味を持ってブースに立ち寄りました。その際、ディサークルの内田社長が単なる機能説明にとどまらず、製品の哲学を熱く語っていたのがとても印象に残っています」と慶田氏は話します。
「製品を見て注目したのは、機能が日本の組織にフィットしているところです。ワークフロー機能では後閲や合議ができるようになっていて、沖縄公庫の風土や金融機関のコンプライアンスを考えた時に決め手になりました。ノーコードや直感的なUIも高く評価しました」(慶田氏)
まず、慶田氏は、「FIT」に同行した青田潤氏とともに、内部説明会やデモ体験を通じてPOWER EGGの有用性に関する理解醸成・合意形成を進め、導入に向けた環境づくりを徹底しました。その結果、従前の類似プロジェクトと比べても異例のスピードで、2023年12月にワークフローとWebDBの導入を正式決定しました。さらに「導入はゴールではなくスタート」と考えた両氏はPOWER EGGを活用するため伝道師の育成に着手しました。
導入支援のパートナー企業である鈴与シンワートの協力の下、研修プログラムを開発して操作研修会を立ち上げ、各部署のキーマンを対象にPOWER EGGの機能や使い方を習得させました。2年目の研修事務局を担当した國吉氏は「オリジナルのテキストや簡易マニュアルを用意し、4回に分けて実施しました。アンケートでは『わかりやすい』との回答がほとんどでした。鈴与シンワートのきめ細かなサポートのお陰です」と話します。研修会は年度を分けて実施、伝道師は現在50人にまで増えています。
成功を体感しやすい
身近な課題解決から着手
POWER EGGでデジタル化する業務については、初年度に伝道師から身近なもので置き換えたい業務の提案を募りました。「110件集まり、効果と実現性を考慮し31件に絞り込み、その全てを2023年度内に実現することをゴールにしました」(慶田氏)
まず対象となったのは、本業である融資以外の一般稟議です。物品購入などの申請書や住所変更届などの各種届出にワークフローを適用していきました。実際にアプリを開発した國吉氏は「研修で事例の学習を重ね、操作に慣れると、簡単なものなら30分で作れるようになりました。UIが直感的でわかりやすいです」と語ります。
POWER EGGのワークフロー機能を使うことで、稟議の案件や流れが可視化されたことが大きなメリットとなりました。稟議の関係者が事前に案件内容を確認できるため手戻りがなくなり、担当者不在で稟議が滞っても、飛ばしの機能(後閲機能)で先に進められるようになりました。
「今までのように書類を持ち回る必要がなくなり、東京や離島の拠点に対しても時間をかけず稟議を回せます。決裁時間が大幅に短縮され、業務全体がスピードアップしました」と久手堅氏。稟議がデジタル化されたことで、子どもの病気などで出社できなくてもテレワークで対応できるようになり、場所に捉われない働き方が実現できました。
また、公庫が公開すべき公文書の管理も自動化されました。久手堅氏は「公文書の作成・保存・廃棄などの管理は法律に基づいて行われています。これまでは手作業でしたが、文書管理ツールとPOWER EGGを連携させることで、シームレスに処理できるようになりました」と話す。
従来、文書が決裁されると、決まった場所に保管し、義務付けられた期限が来ると廃棄処分をしていたのが、文書管理システムを導入して、POWER EGGとシームレスに処理することができるようになり、ペーパーレス化を図ることで重いバインダーを確認する必要もなくなっています。
こうした業務プロセスのDX(業務DX)の基本となったのが、ディサークルが推奨する「ECRS」という、なくす、合わせる、置き換える、簡単にするという業務改革のフレームワークです。「マニュアルにも載せて、月1回の進捗報告会でも遅れている案件を解決するアイデア出しに活用しています」(慶田氏)
業務DXからスタートし
事業DX、構造DXへ
2023年度に立てた31業務を年度内にデジタル化するというゴールは規程改正等にも時間が必要で11業務にとどまりましたが、その後も対象業務を徐々に広げ、現時点では38業務がPOWER EGGに置き換えられています。ワークフロー機能とWebDB機能を組み合わせた貸付業務に係る質疑照会など複雑なものも作られています。
「毎年アンケートを実施してDX推進の理解度や意識の変化を調べています。2025年にはペーパーレスが進んでいるという回答が23%から56%に増え、POWER EGGを理解して利用しているという回答が40%から90%に増えています。ペーパーレスが進み、紙の廃棄量が減りました」と久手堅氏は成果について話します。
全職員の約4分の1が伝道師になったことで、社内のモードも変わりつつあります。慶田氏は「小さな成功体験を積み重ねてデジタル化の効果を実感してもらう戦略は成果を上げています。最近では、研修を受けた職員が生成AIと対話しながらWebDBの画面設計を進め、わずか2日で従前の集計業務からWebDBへの移行を完成させました。こうした取り組みを重ねることで、今後さらにPOWER EGGを活用した業務改革の範囲は広がっていくでしょう」とほほ笑みます。
従来の業務のデジタル化、業務DX以外にもDXは広がっています。顧客接点の強化として挙げられるのがWebサービス「沖縄公庫コネクト」です。取引照会や各種手続きをオンラインで行えるものですが、事業の継承先をマッチングするサービスも始めました。構造改革を伴う「構造DX」といえます。
POWER EGGと物理的な処理を組み合わせた例もあります。従来、業務用車両の利用は庶務課で管理簿と車のキーを借り、自部署で決裁を受けて駐車場へ向かっていました。國吉氏は「今後は駐車場内にキーの電子保管庫を導入し、決裁はPOWER EGG内で完結させることで、手続きの手間を削減します」と話します。
「現在、組織としてシステムのインフラ整備の検討を進めています。POWER EGGによる業務プロセスのデジタル化は、本格的なデータ活用のための第一歩です。今後は、蓄積されたデータをAI等も活用して分析し、お客様への提案やサービスの高度化につなげていきます」と慶田氏は今後のデータ活用についての展望を話します。沖縄公庫のDXはますます加速していきます。
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